僕はケモナーだ。
といっても普通の人にはなんのことだかわからないと思う。
人によってはドイツのなんかすごい家電製品だったり、
ハンガリーあたりの家庭的なお菓子に聞こえるかもしれない。
その言葉の正体は、「動物・その要素を持つ生き物”ケモノ”が好きな人たち」のことだ。
いわゆるオタクの趣味趣向の一種である。
ケモ耳や尻尾、猫ヒゲを付けた少年少女が巷では人気だったりするけど、
それらのキャラクターもケモナーが愛する対象に入る。
(といっても、人の趣味趣向が多様なように、ケモナーの趣味も多種多様である)
で、今回はケモナーにはもちろん、ケモナー以外の人にもおすすめの漫画を紹介するよ!
その漫画はブラックサッド。
私立探偵ブラックサッドは警察のスミルノフに呼ばれ殺人現場に向かう。被害者はかつての恋人ナタリアだった。スミルノフの忠告をよそに、ブラックサッドは独自に事件を調べることにする。しか
し殺害現場に残された手がかりはなく、ブラックサッドは以前ナタリアの用心棒にと紹介したボクサーのジェイクの所に向かう。調べていくうちにブラックサッド自身にも危険が……
ブラックサッドはかつての恋人の無念を晴らすことができるのか?
あらすじだけ聞くとただのハードボイルドな漫画だけに聞こえるかもしれない。
でもそうじゃない。
この漫画をおすすめするポイントを2点、紹介する。
1.全編フルカラー
まずはこの漫画の1シーンをご覧いただこう。
ね? 日本の漫画と違うでしょ?
なんとこの漫画、全ページがフルカラーなのだ。
すべてのページの細部にわたって丹念な色塗りが施されており、まるで絵画を1ページ1ページ見ているかのようだ。
「日本の漫画と」と言ったのは、実はこれ、海外の漫画なのである。
アメコミではない。ヨーロッパの漫画、バンドデシネと呼ばれるものだ。
バンドデシネはフランスを中心とした地域の漫画のことであるが、何よりの特徴としてカラーなのが特徴だ。
どの作品も1話作るのに、漫画家は3カ月~半年という時間をかけて作っているとのことだ。
日本漫画が記号を用い簡略化し連載スピードを上げているのに対し、バンドデシネはその真逆だ。
時間がかかった分、一つの芸術作品としての漫画ができあがるというわけだ。
2.登場人物が全員「動物」
この漫画の最大の特徴が、登場人物が全員動物であることだ。
主人公は黒ネコで、何かと世話になる警察はイヌ、厄介ごとを持ち込む悪い奴らはネズミにヘビ……。
これはケモナーにとってうれしいことではあるが、そうではない人も楽しめるのだろうか?
答えはイエスだ。
人物が動物化していることによって、キャラクター性が立つ。
例えば黒ネコ主人公のブラックサッドは猫にちなんだセリフをかっこよく呟いたりするし、
ねずみやワニといった嫌われがちな動物は、悪者をより悪者らしくする特徴としてその印象を使われている。
表情や仕草も、牙や大きな目、耳を使って非常に豊かに描かれている。
人にはない尻尾だって立派に感情表現の一部だ。
また第2巻では白人と黒人の差別問題を、動物を使ってセンセーショナルに描いている。
これも動物を擬人化することでより皮肉的に、わかりやすく表現しているともいえる。
つらつらと書いたが、ようは面白いので1巻をまずは読んでほしいということだ。
読めば、その圧倒的な色彩から織りなされる世界に引き込まれ、動物たちの豊かな表情の虜になるだろう。
ただ1つ問題があるとすれば、この漫画はちょっとお値段が張るということだ。
この記事へのコメントはありません。